禁じられた歌

朝鮮半島音楽百年史

田月仙(チョン・ウォルソン) 著

 

「鳳仙花」「イムジン江」「ブルー・ライト・ヨコハマ」…。
時の権力に否定された歌と音楽人は、
その後どのような運命を辿ったか

中公新書ラクレ

新書判 256ページ
定価861円(本体820円)

中央公論新社発売 ISBN978-4-12-150269-8 C1273

 

 

「禁じられた歌 朝鮮半島音楽百年史」の内容

「禁じられた歌 朝鮮半島音楽百年史」には、田月仙(チョン・ウォルソン)が自ら出会った当事者たちによる日本と韓国、北朝鮮の音楽の秘話が書かれています。

朝鮮半島の100年の歌をさがすきっかけになったのは、1998年10月。東京都ソウル市友好10周年記念の親善大使として当時日本の歌が開放されていなかった韓国の首都ソウルで初めて日本の歌を歌うことになった。折しも金大中大統領による日本文化開放政策がはじまり日本の歌が解禁されたと大きな話題になった。しかし田月仙が歌うはずだった3曲の日本の歌のうち1曲『夜明けのうた』のみが韓国では「大衆歌謡」になるということで許可がおりず2曲のみを歌った。田月仙はこの出来事をきっかけに日本と朝鮮半島での「禁じられた歌」の歴史をたどりはじめた。

『アリラン 아리랑』
〜二十世紀を刻んだ民族の歌〜

朝鮮民族のシンボルとして韓国、北朝鮮だけでなく、日本、アメリカ、中国などでも歌われている『アリラン(아리랑)』。その歌詞もメロディも異なるが共通しているのは「アリラン峠を越える」というフレーズ。この世界にアリランが広がった理由は何なのだろうか? 写真はロシア・ハバロフスクでのアリランが歌われるイベントに訪れたとき。

『鳳仙花 봉선화』 
〜「日帝時代」花開いた芸術歌曲〜

『鳳仙花 봉선화』は日本統治時代の朝鮮半島で独立のテーマソングのように歌われた。そして朝鮮総督府は作者、洪蘭坡(ホン・ナンパ=홍난파)を要注意人物として思想転向書を書かせた。この当時、洪蘭坡は親日派(친일파)として韓国で追求されており、田月仙は民族問題研究所(민족 문제 연구소)や創立者である林鍾国(임종국)の足跡を取材した。(TBS報道特集でも番組となった)。写真は作者・洪蘭坡(ホン・ナンパ=홍난파)の故郷の村にて。

韓国最初の創作オペラ
『春香傳 춘향전』

右写真:1948年に作曲家の高木東六は在日朝鮮人の依頼でオペラ『春香(춘향)』を上演した。主演は永田絃次郎(ながたげんじろう)。本名は金永吉(キムヨンギル)という在日コリアンだった。彼は北朝鮮で消えた…。それから52年たった2000年に田月仙は東京カザルスホールで高木東六さんと共に『春香』を再演した。そして誕生の秘密を聞いた。さらに韓国初のオペラ玄済明(현제명)作曲のオペラ「春香傳(춘향전)」の存在も。
左写真:韓国ソウル世宗文化会館(세종문화회관)で玄済明(현제명)作曲のオペラ「春香傳(춘향전)」を演じる田月仙。

北と南 統一を願う三つの歌
『イムジン江 림진강』 36度線の北から
『懐かしい金剛山 그리운금강산』 南の人々
『高麗山河わが愛 고려산천내사랑』と『山河を越えて』〜在外コリアンの願い〜

分断国家の韓国と北朝鮮にはそれぞれ統一を願う非常に人気の高い歌がある。その代表曲の知られざる歴史を、当事者の証言で繙いた。

写真:左:韓国で最も人気があり、三大テノールも打てイル「懐かしい金剛山(그리운 금강산)」の作曲者・チェヨンソプ(최영섭)さんと。写真:右:北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)で「イムジン江(림진강)」を歌っている人民俳優(ピパダ歌劇団)のチョ・チョンミ(조청미)さんと

『椿娘 동백아가씨』と『恋の赤い灯』
 〜日韓国交正常化と日本的歌謡〜

1965年、朴正煕(パク・チョンヒ=박정희)大統領は日韓国交正常化に反対する大衆の怒りをおさえるため、映画の主題歌であり大流行歌『椿娘(동백아가씨)』を「倭色(日本的歌謡)」として禁止にした。しかし朴正煕大統領が最も好きな歌は『椿娘』だった。歌った歌手、李美子(이미자)はその後日本デビューを目指したが…。
写真左上は韓国で発売された『椿娘』のレコード。
写真右下は韓国で発売禁止になったあとに日本語で李美子みずからカバーした『恋の赤い灯』

『カスバの女』と早すぎた「韓流」
 〜韓国人が作った日本のヒット曲〜

日本でも人気のある歌「カスバの女」。それは実は韓国人が作った歌だった。作者・孫牧人(ソン・モギン=손목인)は日本と韓国の架け橋だった。そのルーツには日本の統治時代に作った大ヒット曲「他郷暮らし(타향살이)」「木浦の涙(목포의 눈물)」の存在があった。孫さんは東京新宿の病院で亡くなった。

写真は作曲家・孫牧人(ソン・モギン=손목인)(日本名=久我山明)さんと。

『黄色いシャツの男 노란샤쯔의 사나이』
 〜歌謡史を変えた幻の音盤を追って〜

倭色歌謡全盛の韓国で、新しい歌を目指した作られたのがウエスタン調の『黄色いシャツの男(노란샤쯔의 사나이)』だった。この歌は日本の商社マンが持ち帰り日本でも誰もPRしないのに大ヒットした。作者・孫夕友(ソン・ソグ=손석우)さんの気持ちが底にあった。

写真は・孫夕友(ソン・ソグ=손석우)一家と。写真右はようやく探し求めた「黄色いシャツの男」の初版のレコード。

日本の歌謡曲『ブルー・ライト・ヨコハマ』
〜軍事政権時代・禁止されても広がった歌〜

韓国では日本の歌は禁止されている。しかし『ブルー・ライト・ヨコハマ』のみはなぜが大流行した。地下で海賊盤が作られ、誰もが隠れて歌った…。田月仙(チョン・ウォルソン)が1998年から調査を続けている「韓国でブルー・ライト・ヨコハマが広がった理由」。その有力情報を求めて、韓国南部の土地・釜山から光州へと取材旅行をした。折しも光州では韓総連によるデモが行われて、催涙弾が飛び交っていた。そこで見つけた海賊盤には「BLUE NIGHT YOKOHAMA」という怪しいタイトルがあった。のちの著書『K-POP遙かなる記憶』でも続く日韓の歌の謎にせまる第一段。

『朝露 아침이슬』
〜伝説のシンガーソングライターの物語〜

左:韓国で人気が高い『朝露(아침이슬)』は軍事政権で禁止され、作者・金敏基(キム・ミンギ=김민기)も活動禁止になった。しかし『朝露』大衆の間で歌い継がれた。左の写真は作者・金敏基(キム・ミンギ=김민기)さんと。金敏基さんが経営する劇場ハクチョンの前で。後ろにはミュージカル「地下鉄1号線」のポスターが見える。右は北朝鮮の高麗ホテルのカラオケで『朝露(아침이슬)』を歌う女性従業員。北朝鮮でこの歌が広まったのには在日コリアンが関係している。

『カスマプゲ 가슴 아프게』
 〜三十年前の「韓流」〜

いまからは信じられないかもしれないが、戦後長い間日本では「韓国ものはヒットしない」とのジンクスがあった。それをうちやぶったのが「カスマプゲ(가슴 아프게)」だった。「演歌の源流は韓国」というキャッチフレーズで日本で大ヒットした韓流の元祖となった。歌ったのは李成愛(イ・ソンエ=이성애)さん。写真は李成愛さんと共に当時の韓国ブームを支えた作詞家、音楽プロデューサーの三佳令二(名和治良)さん。2005年の新曲「涙は人のために/心の旅路」を録音しているソウルのスタジオ。

『帰れ釜山港へ 돌아와요 부산항에』
 〜在日朝鮮人から在日韓国人へ〜

『カスマプゲ 가슴 아프게』の成功に続いて大ヒットしたのが「釜山港へ帰れ(돌아와요 부산항에)」。この歌は趙容弼(チョー・ヨンピル=조용필)が歌って大ヒットしたのち渥美二郎、桂銀淑、ジェロ、美川憲一、増位山太志郎、日野美歌、内田あかりなど大勢がカバーし日本でも大ヒットになった。ヒットの訳には北朝鮮と韓国の複雑な国際政治があった…。写真は作曲家・黄善友(ファン・ソンウ=황선우)さんと。


『I LOVE YOU』と『恋人よ』
〜日本文化開放の陰で〜

韓国で日本語の歌は禁止され続けた。そういう中でも五輪真弓の『恋人よ』の海賊盤が広がるなど違法コピー、海賊盤などが広がった。また日本の歌の盗作事件も起きた。そんな中、尾崎豊の『I LOVE YOU』がライセンスをクリアして、日本語ではなく韓国語で公式にカバーされ大ヒットになった。歌った歌手・position(포지션)はこの歌でいちやくスターダムに昇った。写真は2005年、ペ・ヨンジュン(배용준)主演「四月の雪(외출)」の撮影現場。このステージで『I LOVE YOU』の韓国語バージョンが歌われた。このころ日本では「韓流」ブームが起きていた。

 

 

“민족의 아픔 담긴 노래 통해 역사 보고 싶어”
‘금지된 노래·조선반도 음악백년사’ 펴낸 재일동포 성악가 전월선

|도쿄 박홍기특파원|“노래에도 민족의 아픔과 설움이 고스란히 아로새겨져 있지요. 그래서 노래를 통해 역사를 보고 싶었습니다.”

▲ 전월선 재일동포 성악가
일본에서 ‘금지된 노래·조선반도 음악백년사’를 펴낸 재일동포 2세 성악가인 전월선(田月仙·50)씨가 밝힌 출간 배경이다. 그는 “‘일본강점 100년’을 맞는 2010년을 염두에 두고 부제를 ‘조선반도 음악백년사’로 달았다.”고 말했다.

●일본·북한서 금지된 노래도 소개

도쿄에서 태어난 전씨는 일본음악계를 대표하는 소프라노의 한 사람으로 활약하고 있다.1985년에는 평양을 방문해 김일성 주석 앞에서 노래했고,1994년에는 서울 예술의전당에서 오페라 ‘카르멘’에 주역으로 나섰다.2002년에는 도쿄에서 고이즈미 준이치로 당시 총리가 주최한 김대중 대통령 환영 공연에도 출연했다.

이번에 내놓은 책은 일제강점기, 남북 분단, 군사정권 등 역사의 굴곡에 따라 부를 수 없었거나 부르기를 꺼릴 수밖에 없었던 노래들의 뒷이야기를 담았다.‘아리랑’과 ‘봉선화’,‘임진강’,‘그리운 금강산’,‘동백아가씨’,‘고려산천 내사랑’,‘아침이슬’,‘노란샤쓰의 사나이’….2006년 펴낸 자전적 논픽션 ‘해협의 아리아’에서 못다한 노래에 얽힌 사연도 담았다.

전씨는 “한국에서 허용하지 않았던 노래를 주로 다뤘지만 일본·북한에서 금지된 노래도 소개했다.”면서 “가능한 한 자료보다는 해당 노래의 작사·작곡가 등 관계자들을 직접 만나 이야기를 듣고 그들의 삶터도 찾아 가봤다.”고 밝혔다.

‘해협을 넘나드는 가희(歌姬)’라는 수식어가 따라붙는 전씨는 일본 공연 때엔 되도록 한국 가곡을 두세 곡 정도 부른다고 했다.

북한 노래 ‘임진강’은 음반으로 냈을 만큼 즐겨 부른다. 이 노래는 1968년 일본 그룹사운드 ‘포크 크루세이더’가 불러 크게 인기를 끌었다. 하지만 음반이 출시되기 직전 북한과 조총련이 강하게 반발해 처음에는 발매되지 못했고, 전파도 탈 수 없었다.

●10월 도쿄서 막 올릴 오페라 ‘춘향전´ 준비 한창

그는 ‘임진강’을 두고 “아름다운 노래로 한국에서는 1994년 처음 불렀다.”면서 ‘임진강 맑은 물 흘러 흘러내리고, 물새들 자유로이 넘나들며’라는 가사를 읊조렸다.

‘그리운 금강산’의 작곡가 최영섭씨가 금강산을 방문할 때 ‘이 노래를 불러서는 안 된다.’며 미리 안내원으로부터 주의를 받는 일화도 소개했다.

“봉선화는 곡절도 많죠. 일제강점기에는 일제가 막았고, 지금은 작곡가인 홍난파 선생이 친일파로 낙인찍히는 바람에 잘 불려지지 않지요. 노래가 가진 사연은 이루 다 말할 수 없습니다.”

요즘 전씨는 한국의 뉴서울오페라단이 오는 10월 도쿄에서 막을 올릴 오페라 ‘춘향전’에서 춘향역을 맡아 연습에 한창 바쁘다. 그는 “춘향역을 두번이나 해봤지만 늘 새롭게 흥분된다.”며 웃었다.

問い合わせ

Chon Wolson officilal Website www.wolson.com