南北の枠超え、故郷の曲−−在日の歌手と素人合唱団が「音楽の夕べ」
◇30日に中野ゼロホール
三八度線の両側で舞台に立った、唯一の在日コリアン歌手で二期会会員のオペラ歌手、田月仙さんと在日一―三世で作る合唱団などが共演する音楽会「50曲の歌でつづる解放50年音楽の夕べ」が三十日、中野区の中野ゼロホールで開かれる。
戦後五十年間、「在日」として暮らしてきた人々が故郷を思いながら口ずさんだ五十曲を披露し、若い世代には忘れかけた歴史を伝える。南北の枠を超えた在日の有志で企画された。
民族歌「アリラン」や一九二〇年代の「鳳仙花」、戦後の「平壌はわが心の故郷」「ソウル賛歌」などを田さんらプロの芸術家と、田さんの指導を受けた素人の在日一―三世約四十人で作る「ノグリ(ハングルでタヌキの意味)合唱団」が歌う。
合唱団の一員で、音楽会事務局の中心メンバー、金清貴さん(24)は「南北どちらの団体にも頼らず自由に選曲し、出演者の交渉もしました。政治的に困難な面もありましたが、南北の壁や世代を完全に越えた公演は初めて。在日の歴史は日本の歴史の一部であることを再認識する機会にしてほしい」と参加を呼びかけている。