「夜明けのうた」で夜明け 韓国「日本語歌謡曲」ソウルで解禁に

 歌謡曲の解禁第一号は「夜明けのうた」――。日本語で歌うことが公式には許されなかった韓国で、戦後続いたタブーが今月末に見直されることが確実になった。在日韓国人歌手の田月仙(チョンウォルソン)さん=東京都杉並区、写真=が、東京都とソウル市の友好都市提携十周年を記念する事業の一つとして二十五日、ソウルの舞台に立ち、日本語で歌を披露する。来週来日する金大中・韓国大統領が「文化開放」を打ち出す時機を見ながら、両都市が水面下の折衝を重ねた末に決まった。

  田さんは二期会会員でオペラを得意とし、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で一九八五年に音楽祭に出演。九四年にはソウルで「カルメン」を演じ、初の「南北公演」を果たした。

 先乗りのタイミングのよさの裏では、「記念行事を新時代の交流の出発点に」と考える東京都の思惑も働いたようだ。国際部交流推進室は「もともとイベントは十一月に予定されていましたが、大統領の来日日程が浮上した八月ごろ、繰り上げを決めました。解禁第一号? ねらっていました」と明かす。

 すでにソウル市の了解も取り、岸洋子さんが歌ってヒットした「夜明けのうた」をはじめ、「浜千鳥」「赤とんぼ」など、候補曲の歌詞に問題がないかどうかの検査を受けている最中だという。韓国語でも「高麗山河わが愛」などを歌う。

 都がソウル市に確認したところ、日本語の歌謡曲はハプニング的に歌われたり、昨年の記念行事でも日本人会の婦人会が歌ったりしたことはあったが、プロによる公式な記録はないという。

 田さんは「在日の一人として、日韓両国の橋渡し役になれることに感謝します。でも、大変な責任も感じます」と話している。