日韓交流“夜明けのうた”日本語演奏解禁 在日の歌手・田月仙さんソウルで披露
◆「待ち望んでました」
来日中の金大中・韓国大統領は、八日午前に署名された日韓共同宣言で、日本語の映画や音楽を韓国内で解禁していく方針を明らかにした。これを受け、在日韓国人のオペラ歌手・田月仙(チョンウォルソン)さんが今月二十五日、ソウル市内で開かれる公式イベントで「夜明けのうた」を日本語で歌う。芥川賞作家・柳美里(ユウミリ)さんの小説を映画化した「家族シネマ」の撮影も終わり、韓国で日本語映画が初めて一般上映される日も近づいている。戦後半世紀もの間、原則禁止の状態が続いてきた日本語の文化・芸能。日本語での公演や上映を準備する動きに拍車がかかりそうだ。
田さんは今月二十五日、東京都とソウル市の友好都市提携十周年事業としてソウルで開かれる「地球村まつり」で、「夜明けのうた」「赤とんぼ」など数曲を日本語で披露する。日本の歌をプログラムに盛り込むことについて、東京都の交流推進室がソウル市側に打診したところ、ほとんど問題なくOKが出たという。
韓国では、戦前の日本統治下に日本語を強要されるなど民族の文化を侵害されたため、日本語の映画、ビデオ、CDなどの上映や販売はもとより、コンサートなどで日本語で歌うことも原則禁止とされてきた。
これまでは、演歌歌手の天童よしみさんが韓国内のコンサートで日本語歌詞で歌うなど、いくつか前例はあるものの、許可は厳しかった。今回、首都同士の公式イベントですんなりと日本語の歌が認められたことは、金大統領の文化開放姿勢が影響していると、関係者は見ている。
ソウルで歌う田さんは在日韓国人二世。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の音楽祭に招かれて歌ったこともある。共同宣言に日本文化の解禁方針が盛り込まれ、田さんは「長く待ち望んでいました」と手放しで喜ぶ。「日本と韓国の両方に気持ちが通じる私たちが文化交流のかけ橋になりたい」と話し、ソウルで披露する歌の仕上げに入った。田さんは日本語と韓国語双方の歌詞で吹き込んだCDも制作中で、韓国内で初の一般発売をめざしている。
写真=「夜明けのうた」の練習に熱がこもる田月仙さん=東京・渋谷区内のスタジオで